飲食店では、丁寧な接客やおいしい料理と同じくらい、衛生管理も非常に重要です。
どんなに調理場がきれいに見えても、衛生基準に基づく点検が行われていなければ、思わぬ食中毒の発生や行政からの指導を受けるリスクがあります。
そのため、日頃からの継続的な管理こそが、衛生対策の第一歩と言えるでしょう。
最近では、自主点検表の作成や記録の保存が当たり前になりつつあります。
本記事では、飲食店における衛生点検の進め方から、チェックリスト作成時の注意点まで、わかりやすくご紹介します。
飲食店の衛生点検とは、店舗で提供される食品やサービスが公衆衛生の基準を満たしているか、つまり安全かつ衛生的な環境で調理・提供されているかを、内部または外部の立場から確認するための重要なプロセスです。
すべての飲食店は食品衛生法に基づき、衛生基準を遵守し、定期的な検査を受ける法的義務があります。
特に2021年6月からは、HACCPに基づく衛生管理の導入が全面義務化されたことにより、衛生管理に対する基準と監督体制がより強化されました。
飲食店では、以下のような項目について明確な基準を満たす必要があります:
もし基準を満たしていないと判断された場合は、是正命令 → 営業停止 → 営業許可の取消しといった段階的な行政処分が下される可能性があります。
飲食店における衛生管理が不十分な場合、食中毒や感染症の集団発生リスクが一気に高まります。
実際、日本では年間1,000件以上の食中毒事件が継続的に発生しており、その多くは飲食店や仕出し業者など外食関連事業者に起因しています。
たとえば、2022年には1,032件(患者数15,328人)の食中毒が報告されており、厚生労働省の発表によると、その大半が外食産業から発生したものでした。外食の機会が増え続ける中で、調理工程や施設の衛生が適切に管理されていない場合、消費者全体の健康リスクにつながる恐れがあります。
だからこそ、日々の衛生チェックと継続的・体系的な管理体制の構築が欠かせません。
2021年6月1日より施行された改正食品衛生法により、すべての食品関連事業者(飲食店を含む)にHACCPの導入が義務化されました。
対象となるのは「一般飲食店」はもちろん、「宿泊施設内の飲食部門」、「弁当・総菜・寿司店」など、あらゆる外食業態です。
具体的には以下の項目が事業者に義務付けられています:
これらが実施されていない、あるいは虚偽報告があった場合、保健所による指導・是正勧告、営業停止や罰則といった対応がとられることもあります。
また、各自治体でも「衛生管理優良店」や「衛生管理評価制度」などの認証制度を設けており、一定の基準を満たした店舗には衛生的な優良店としての認証が与えられます。
(例:東京都「飲食店等衛生自主管理認証制度」など)
飲食店の衛生点検は、自主点検(内部チェック)と行政による立入検査(外部チェック)の2つに大きく分けられます。食品衛生法やHACCP制度に基づき、こうした点検が体系的に管理されています。
店舗が日々行う自己管理としての衛生点検は、以下のような流れで実施されます。
最近では、スマートフォンやQRコードを使ったデジタル点検も浸透し、記録管理がより手軽に行えるようになっています
保健所や自治体が食品衛生法に基づき、年に1回以上行う公式な点検です。
自主的な内部管理 + 行政による監督 の二重構造で運用される飲食店の衛生点検においては、
日々の記録と対応体制の整備が何よりも重要なポイントです。
まず、店舗ごとに「食品衛生責任者」を一人以上必ず選任する必要があります。責任者は店舗の衛生基準を把握し、スタッフへの教育や指導、行政からの問い合わせ対応などを担います。
HACCPとは「危害要因分析に基づく衛生管理手法」のこと。店舗で取り扱うメニューや調理方法に応じて、リスクを分析し、管理が必要な重要管理点(CCP)を明確にします。
調理器具、冷蔵庫、食材、スタッフの衛生状態など、日々チェックすべき項目をチェックリスト形式でまとめておきましょう。「何を」「いつ」「どのように」点検するのかを明文化することで、誰でも同じ基準で作業できます。
原材料の受け入れ → 保管 → 調理 → 提供まで、各工程ごとの管理方法を明確にし、衛生管理計画書としてまとめておきます。これは保健所からの点検時にも非常に重要な資料になります。
冷蔵庫の温度加熱温度と時間調理器具の使い分け交差汚染の防止 など、項目ごとにモニタリングルールを設定し、日々記録を残します。スマートフォンやQRツールを活用したデジタル管理もおすすめです。
点検表や教育記録、異物混入報告などは最低1年間は保存し、定期的に振り返りを行いましょう。スタッフの入れ替えや新メニューの追加時には、計画をアップデートすることも重要です。
万が一、異常が発生した場合(食材の異常、体調不良者の発生など)には、どのように報告するかどのような処置を行うかどの記録に残すかといった対応フロー(マニュアル)をあらかじめ整備しておくことで、迅速かつ的確な対応が可能になります。
日々の衛生管理を確実に行うために欠かせないのが「チェックリスト」です。ですが、ただ項目を並べただけでは現場で活用されづらく、形骸化してしまうことも。ここでは、実際に使えるチェックリストを作成するためのポイントを5つに分けてご紹介します。
チェックリストは誰が使用するか(例:店舗スタッフ、管理者、外部清掃業者など)によって、表現方法や項目数を調整することが大切です。
専門用語や抽象的な表現は避け、誰でも理解できる具体的な行動ベースで記載しましょう。
例:「清潔に保つ」 → 「作業後にモップで床を拭いたか?」
「食材の受け入れ → 調理 → 提供 → 閉店清掃」のように、実際の作業動線や時間帯ごとの流れに合わせて項目を整理すると、現場で活用しやすくなります。
朝・昼・夜など、時間帯ごとに点検が必要な場合は、時間欄を追加して内容を細分化するのもおすすめです。
「適切に保管されている」よりも、「冷蔵庫の温度が5℃以下であること」といったように、明確な判断基準(数値)で記載することで、点検の信頼性が高まります。
単に「〇/✕」で済ませるのではなく、異常があった場合に詳細をメモできる欄を必ず設けましょう。
例:「異物発見時は、日付・場所・内容を記入」
点検記録は最低1年間の保管が義務とされています。
担当者名やサイン欄を入れることで、万が一のトラブル時にも対応しやすくなります。
「HADA(ハダ)」を使えば、紙のチェックリストを印刷・保管する必要はありません。スマートフォンひとつで、誰でも簡単に衛生点検・記録・管理が可能です。
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