多くの人が利用するトイレで最も大切なのは、やはり「清潔さ」です。
快適で衛生的な環境を保つために、清掃担当者は抗菌・除菌などの機能を持つ製品を活用し、定期的に掃除と消毒を行っています。
どれも「衛生」に関わる言葉ではありますが、それぞれの意味や作用には違いがあるため、トイレのように多くの人が共同で使う場所では、これらの用語を正しく理解し、目的に合った製品を選ぶことがとても重要です。
この記事では、現場の清掃スタッフはもちろん、利用者の皆さんにも知っておいてほしい「除菌・抗菌・殺菌」の基本的な違いや、それぞれの製品をどうやって清掃業務に活かせるのかをわかりやすくご紹介します。
1. 抗菌(こうきん)
抗菌とは、細菌やカビなどが繁殖しないように抑制することを意味します。
菌を直接殺すわけではありませんが、表面に付着した微生物の増殖を防ぐ予防的な効果があります。
人が頻繁に触れる部分に抗菌処理を施すことで、菌の繁殖を抑えるのに役立ちます。
例:トイレのドアノブやソープディスペンサーなどに抗菌コーティングを施すことができます。
2. 除菌(じょきん)
除菌とは、表面に存在する細菌や微生物の数を物理的または化学的に減らすことを指します。
すべての菌を除去するわけではありませんが、一定の衛生レベルに改善するために効果的です。
例:洗面台やパウダールームなどには除菌スプレーを使って手軽に衛生管理ができます。
3. 殺菌(さっきん)
殺菌とは、細菌やウイルスなどの微生物を直接死滅させることを意味します。
除菌よりもはるかに強力で、汚れがひどいエリアや悪臭・カビの除去が必要な場所で使用されます。
例:便器の内側や床の排水口には殺菌洗剤を使用して徹底的な清掃を行うことができます。
4. 滅菌(めっきん)
滅菌とは、細菌・ウイルス・カビ・胞子などすべての微生物を100%完全に除去することを意味します。
生存率0%を目指す方法であり、一般的なトイレ清掃というよりも、病院の手術室や研究室など特殊な衛生環境で使われます。
例:高温スチーム滅菌器や紫外線(UV)滅菌装置は医療機器の滅菌に使われます。
滅菌は日常的な施設の衛生管理にはほとんど使われず、専門的な衛生環境のための高度な手法です。
抗菌製品は菌の繁殖を抑えるためのものであり、殺菌製品は菌を直接死滅させることを目的としています。
たとえば、抗菌スプレーを殺菌目的で使用しても十分な効果は期待できないため、製品の機能と用途に応じて正しく選び、使用することが大切です。
次亜塩素酸ナトリウム系の殺菌剤を使用する際は、正確な希釈倍率を守ることが重要です。
濃度が濃すぎると刺激が強くなり、金属の腐食や肌への刺激を引き起こす可能性があり、薄すぎると殺菌効果が低下します。
例:0.05%の殺菌用希釈=塩素系漂白剤10mL+水1L
多くの殺菌製品には化学成分が含まれており、密閉された空間で使用すると呼吸器への刺激や頭痛を引き起こす場合があります。
トイレ清掃の際は窓を開けるか換気扇を回し、利用者にも清掃中であることを知らせる掲示を活用することで、より安全に管理できます。
製品を使用する際は手を保護するためにゴム手袋を着用し、スプレータイプの製品は顔から離して噴霧してください。
また、殺菌効果を得るためには製品が表面に一定時間留まる必要があり、噴霧直後に拭き取ってしまうと効果がほとんどありません。
一般的には5分以上放置してから拭き取ることが推奨されています。
塩素系漂白剤と酸性洗剤を併用すると、有毒な塩素ガスが発生し非常に危険です。
したがって、異なる種類の製品を同時に使用しないこと、また製品使用後は必ず水でしっかり洗い流してから次の製品を使用することが原則です。
ここまで紹介した内容を実際の清掃業務に活かすには、点検項目と清掃スケジュールを明確に設定することが重要です。
建物の規模や担当人数により運用方法は異なるため、以下のマニュアルを参考に自社に合った点検表を作成してみてください。
⚠️ 午前中はニオイや汚れが特にひどい時間帯のため、殺菌洗剤を十分に使用し、換気も必ず行いましょう。
抗菌、除菌、殺菌、滅菌の違いを理解し、それぞれの製品を正しく使い分けることは、トイレ清掃において非常に重要です。
簡単に整理すると、抗菌は菌の増殖を抑え、除菌は菌の数を減らし、殺菌は菌を死滅させるという違いがあります。
清掃マニュアルと併せてトイレを定期的に点検・記録することで、担当者が変わっても引き継ぎなしでスムーズに作業を行うことができます。
今後は紙の点検表の代わりに、誰でも簡単に使えるQRステッカーによる点検ツール「HADA(ハダ)」をぜひご活用ください!